我が家には、妻が長年使っている包丁があります。
新潟県三条市、いわゆる燕三条エリアの刃物メーカー「タダフサ」の170mmステンレス三徳包丁(HK-02)です。
かれこれ15年ほど使っているでしょうか。
家庭で使いやすい三徳包丁で、両刃のタイプなので左右どちらの手でも使える、いわゆる万能包丁です。
柄にはタダフサの特徴でもある栗材の抗菌炭化木が使われています。長年使ってきたことでほどよく色が変わり、新品の木柄とは違った味わいが出てきました。
タダフサの包丁は名入れにも対応していて、我が家の一本にも妻の名前を刻印してもらっています。
そんな包丁を、ある日私がうっかり欠けさせてしまいました。
今回は、その包丁をタダフサに送って、刃欠け直しと研ぎ直しをお願いした話です。
15年使っているタダフサの包丁

タダフサは新潟県三条市にある刃物メーカーで、1948年創業。
家庭用・業務用の包丁をはじめ、さまざまな刃物を手がけています。昔ながらの技術を生かしながら、暮らしの中で使う道具を作り続けているメーカーです。
我が家の包丁にも、刃元のあたりにタダフサの特徴的な刻印があります。
私にはハサミのようにも見える、ちょっと印象に残るマークです。
そして、この栗材の柄がまたいい。
タダフサでは栗材を抗菌炭化木に加工して柄に使っていて、15年ほど使っているだけあって、新品の木柄とは違ったツヤと色合いがあります。
名前の刻印も含めて、妻にとっては単なる調理道具以上に思い入れのある一本になっています。
新品の状態もきれいですが、長く使った道具には、その時間そのものが残っているようで、これはこれでいいものです。
なぜか私が使ってしまった

この包丁は、妻が普段から愛用しているもの。
一方、私は自分の包丁を使うことが多く、妻の包丁を使う機会はあまりありません。
ところが、その日に限ってなぜか使ってしまいました。
冷凍状態の肉を切ろうとしていたのですが、いつもなら出刃包丁を使うところを、取りに行くのが面倒で、たまたま近くにあった妻のタダフサを手に取ってしまったのです。
硬い肉を無理に切ろうとしたところ……
「パキッ」
嫌な感触がしました。
見てみると、刃元のあたりがかなり大きく欠けています。
欠けた刃のかけらも見つかり、大きさは直径で3mmほど。
これはさすがに、自分でちょっと研いで済ませるというレベルではありません。
普段使わない妻の包丁を、よりによって硬い肉を切るために使って欠けさせてしまった。
完全に私の不注意です。
買い替えるより、直して使いたい
妻は「新しい包丁を買ってもいいよ」と言ってくれました。
でも、15年ほど使ってきた包丁です。
栗材の柄もいい具合に馴染んでいるし、名前も入っています。
なにより、妻が長年使ってきたもの。
せっかくなら、もう一度使える状態に戻したい。
そう思って、修理することにしました。
ただ、3mmほども欠けた刃を自分で直すのは、さすがにハードルが高い。
そこで、購入元でもあるタダフサにお願いすることにしました。
タダフサに刃欠け直しと研ぎ直しを依頼

タダフサでは、自社製品だけでなく、他社製の包丁についても研ぎ直しや刃欠け直し、型直しなどを受け付けています。
ホームページから「包丁問診票」をダウンロードして記入し、今回は刃欠け直しと研ぎ直しを依頼。

刃が飛び出さないよう段ボールでしっかり覆って梱包し、指定された送り先へ宅配便で送りました。
あとは職人さんにお任せです。

送ってから1週間ほどで、着払いで包丁が戻ってきました。
今回支払ったのは、修理代と送料、手数料を合わせて2,640円。
初めてプロに包丁の修理をお願いしたので、もっと高いものだと思っていました。
この金額なら、かなり気軽にお願いできます。
少し小さくなったけれど、ピカピカに

戻ってきた包丁を見ると、欠けていた部分はきれいになくなっています。
欠けたところまで刃を削って形を整えたため、以前よりほんの少し包丁が小さくなっていました。
でも、それ以上に驚いたのがその仕上がり。
ピカピカで、ツヤツヤです。

長年使ってきた包丁とは思えないほど刃がきれいになり、金属なのに触ってみると不思議としっとりした感触まであります。
一方で、栗材の柄や名前の刻印など、15年間使ってきた時間までは消えていません。
(※名前部分には画像上一部ぼかしを入れています)
刃だけがきれいにリフレッシュされたような感じです。
「やっぱりプロの仕事は違うな」と、素直に感心しました。
そして何より、
直ってよかった。
これで妻の機嫌も取れたので、そこもよかったです(笑)。
「型直し」という方法もある
今回タダフサのサイトを調べていて、初めて知ったのが「型直し」という修理方法でした。
刃先が折れてしまったり、大きく欠けて包丁の形そのものが崩れてしまった場合でも、残っている部分を生かして形を整え、もう一度包丁として使えるようにする方法です。
「これはもう包丁として使えないかな」と思うような状態でも、完全に諦める必要はない。
もちろん状態によって修理できるかは変わりますが、一度プロに相談してみる価値はありそうです。
良いものを、手入れしながら使っていきたい

今回のことで、包丁に対する考え方が少し変わりました。
私自身が普段使っているのは、ホームセンターで買った3~4千円くらいのオールステンレス包丁。
食洗機にもそのまま入れられるので、これはこれで気楽で気に入っています。
一方で、妻のタダフサは、多少形は変われど15年使った今でも修理してまた使うことができました。
もちろん、すべての道具を高価なものにすればいいという話ではありません。
でも、気に入った良いものを買って、壊れたり切れ味が落ちたりしたら手入れをして、また使う。
そんなサイクルは、使い手にとっても、作り手にとっても、いい関係なんじゃないかなと思います。
使い続ける人がいるから、作り手も修理や手入れの仕事を続けられる。
そして、そうやって長く使われることで、良いものを作っているメーカーがこれからも残っていく。
今回、タダフサに修理をお願いしてみて、そんなことを少し考えました。
これからは私自身も、ただ「安くて便利だから」というだけでなく、長く使いたいと思える良いものを選び、手入れしながら使っていくことを大切にしたいと思います。
そうすることが、巡り巡って、良いものを作り続けている人たちを応援することにもつながるのかもしれません。
15年使った妻の包丁も、また我が家の台所に戻ってきました。
これから先、また何年使えるのか。
そんなことを考えながら使う道具も、なかなかいいものです。

