この【石積みDIY】シリーズでは、石積みの種類の違いや道具、テクニック、完成までの作業工程などについて、全5回にわたりテーマや工程ごとに分けて紹介しています。
- 【石積みDIY①】木曽石を積んで植栽が生きる庭をつくる
- 【石積みDIY②】必要な道具の準備
- 【石積みDIY③】木曽石が購入できる場所は?
- 【石積みDIY④】積み方(床堀り作業)
- 【石積みDIY⑤】積み方(空積み作業)
今回は5回目で最終回「空積み(からづみ)のやり方」についてご紹介します。
空積みとはセメントなどの接着剤を使わずに石を積む方法のこと。
昔から傾斜地の田畑を作るために受け継がれてきた農業技術の一つでした。
現在はコンクリート材や重機の普及により伝承が途切れしまいましたが、積み方のコツやルールさえわかれば誰でもできる簡単な作業なのです。
難しく考える前に、まずは石を積んでみましょう!
今回は石の積み方についてポイントをまとめてみました。
私のバイブル「誰でもできる石積み入門」
まずはじめに石積みに関する書籍を紹介します。
素人の私が石積みをゼロから始めるにあたり、大変参考にさせてもらった書籍があります。
それが、「誰でもできる石積み入門(真田純子 著)」。
入門編ということで初めての人が読んでも大変わかりやすく、言葉だけでは伝わりにくいイメージもイラストや写真が豊富に取り入れられているため理解しやすかったです。
動画やネット文献なども数多く探しましたが、作業の大部分はこの書籍からの情報がが大きかったので、これから石積みを始めたい方にはとてもおすすめな1冊です。
石を積む手順

石を積む手順はざっくりと以下の流れになります。
- 基準となる水糸を張る
- 根石を置く
- 積み石を置く
- グリ石を詰めて固定する
まずは整った面を造るために水糸を張り基準を作ります。
石の顔と呼ばれる先端の面をこのラインに合わせて積むことで、面の整った石積みを造ることができます。
準備が整ったら、まずはじめに一番下になる根石(ねいし)を配置。
場所が決まったらグリ石を詰めて固定。
その上に積み石を置いて、またグリ石を詰めて固定。
ざっくり言うと、この流れでどんどんと石を積んでいく感じです。
あとは
石を積むポイント
重心は斜め後方に


垂直に積むと安定が悪いので、必ず山側に重心をかけて石を積んでいきます。
20〜30%の傾斜(100cmの高さで20cm前後差)で詰めると理想的。
山側と下の石の両方に重さがのる感じで積んでいくと安定します。
まずは石の顔を見る

石には「顔」と呼ばれる面があります。
顔とは、石を立方体だと考えたときに短辺側の広い面であることが多いです。
顔の面を外側に向けて積んでいくと丈夫で安定した石積みを造ることができます。
また、積み石の奥行きのことを「控え長(ひかえちょう)」と呼ぶのですが、この長さが長いほど石積みは安定すると言われています。
そのため、積み石は長い方を奥行きにして置くのが理想的。
ただし、十分な控え長が取れるサイズならば、横向きに使用しても問題ありません。
表面積を稼ぐために長い石を横向きに置きたいところですが、控え長が十分にない石を横向きに積むと強度が落ちてしまいます。低い石積みや上の方に使うならそこまで問題ないかもしれませんが、一応この原則は頭に入れて石を積むように作業を進めます。
グリ石を入れて噛ませる

積み石を積んで角度を決めたら、グリ石を詰めて安定させます。
グリ石は積み石よりも小さく隙間を埋めやすいように色々な形や大きさがあっても使いやすいです。
また、積み石の厚みとグリ石の厚みが同じくらいになるように、しっかりとグリ石を詰めることで排水層がしっかり確保でき安定につながります。
このグリ石の厚みをケチってしまうと、石の隙間に土が流入し目詰まりを起こし排水性が悪くなります。すると水を含んで重たくなった土に押され崩壊のリスクがあがります。
二つ以上の石に重さが分散するように置く
「できれば3点」「最低でも2点」に石が接するように置くと安定します。
重ね餅のように上に積み重ねるような置き方は強度が無くすぐに崩れてしまうので避けたいところです。
大きい石から小さい石の順で積む
下段ほど大きな石を使い上にいくほど小さな石にすることで構造的に安定します。
また、上の方は軽い石の方が作業が楽という利点も。
隙間が空いていても大丈夫

「石積み」と言われると、みっちりと隙間のないお城のようなもの石積みを想像するかもしれませんが、加工をほとんどしない野面石(のずらいし)で積む空積みは隙間があっても大丈夫。
むしろ隙間だらけです。
お城などは敵の侵入を防ぐために足掛かりとなる隙間が出来ないように石を積む必要がありました。
しかし隙間は有っても無くても強度に差は無いため、庭の石積み程度でしたら全く問題ありません。
また隙間があることで通水排水性が上がり植栽たちには好都合だったりします。
崩れやすい!積み方の御法度

さて、素人が石積みを造ると聞くと「崩れるのではないか?」と不安になることも多いでしょう。
確かに何も知らずにただ石を積んでいくだけでは崩れやすくなります。
ただ、それはやってはいけない積み方をしていることが要因の場合が多いと思います。
石積みには御法度の積み方がいくつか存在します。
この御法度積みをすると石は不安定になり崩れやすくなってしまうのです。
反面、この積み方さえしなければ石と石が噛み合い頑丈な石積みが出来上がるわけです。
代表的なやってはいけない積み方についていくつか紹介します。
四つ巻き(八つ巻き)

一つの小ぶりの石の周りを四つの石で取り囲む積み方。
3と4の石が突き合って真ん中の石に荷重が乗らない状態のため、石が抜けやすく崩れやすい。
同様に八つの石で取り囲む「八つ巻き」も要注意。
重ね石(芋串)

同じ石がただ積み重なっている状態。
石同士が噛み合っていないため、崩れやすい。
鏡石

横置きに積んで使う石を縦に使う積み方。
表面積が広くなり作業が早く進むのですが、石同士の接点が少なく摩擦が減少するため崩れやすい。
目通し・十文字

一直線または十文字に石が積まれる状態。
これも崩れやすい積み方。

薄い石を水平・垂直に積む積み方。
力が分散されないため割れて崩壊しやすい。
石積みを上達させるには
綺麗な石積みを作るには経験が必要です。
とにかく積むこと。
素人の私も、初めは不恰好な積み方だったものが、完成が近づくにつれ整った石積みを作ることができるようになってきました。
石を積んでいるうちに、石の顔が見えるようになり「この石はこの向きで置こう」など、なんとなくコツを掴んで上達していきます。
私の経験から言うと、後半は上達して綺麗に積めるようになるので、初めのうちは目立たない場所や、低くて積み直しが簡単な場所から始めると良いかもしれません。
過去の工程について
過去の工程について確認したい方は下記のリンクからお願いします。
- 【石積みDIY①】木曽石を積んで植栽が生きる庭をつくる
- 【石積みDIY②】必要な道具の準備
- 【石積みDIY③】木曽石が購入できる場所は?
- 【石積みDIY④】積み方(床堀り作業)
- 【石積みDIY⑤】積み方(空積み作業)

